【アクション報告】神戸製鋼所 株主総会2022 株主としてアクション(2022/06/22)

6/22(水)、株式会社神戸製鋼所の第169回定時株主総会が開催されました。

神戸製鋼所は、大気汚染、温室効果ガスを大量に排出する石炭事業を行っています。深刻化する気候危機を回避するには、同社の脱炭素に向けた取り組みが重要です。当会は、神戸市において神戸製鋼所が行う、270万kWの石炭火力事業に対して、環境悪化を懸念する市民と共に、神戸製鋼所に対して、計画見直しの声をあげてきました。

 

2021年からは、当会のメンバーが株主となり、株主アクションを開始し、経営陣に対して事業リスクが高い石炭火力発電事業の見直し、脱炭素経営への方針転換を訴えています。また、神戸製鋼所グループの事業における脱炭素に関する課題をとりまとめた、事業リスク・レポートを毎年、編集・発行し、株主総会に参加される株主の方々へ配布しています。 

 

株主総会でのやり取り

【※質疑の内容は、内容を簡略化しており、正確性を保証するものではありませんので、ご留意ください。】

 

今年の株主総会では、当会の株主以外の方から、事業リスク・レポートの内容を参考に、石炭火力事業に関する質問がありました。神戸製鋼所の脱炭素の取り組みについて、株主の関心は年々高まっていると感じました。

 

(一般の株主)2050カーボンニュートラルによる石炭火力事業の見通しは?

(神鋼)2030年前半にアンモニア混焼・専焼を取り入れ、2050年カーボンニュートラルを達成する。

 

(一般の株主)会場前で配布されていた事業リスク・レポートでは、アンモニア混焼20%でも、CO2排出量は4%しか減らないと書かれているが、それは本当か?

(神鋼)アンモニアが何から生成されるのかによってCO2排出量が異なる。再エネから作られるグリーンアンモニア、CCS付きのブルーアンモニアの利用を目指している。

 

(当会の株主)2021年9月の発電コスト検証WGとりまとめで日本においても石炭より再エネが安価になるという分析が出た。このような分析が出ても、石炭火力を使い続けるのか?

(神鋼)確かにそのような分析が出たが、政策経費を考慮すると、再エネには系統安定性を確保する必要があり、そのコストが再エネ価格に上乗せされる。事業用太陽光(11→19円)は石炭(13.6→13.7円)よりも高くなる。国のエネルギー基本計画に基づいて、エネルギー源の長所、短所を活かす必要があると考えている。

 

(当会の株主)グリーン水素は(現状は)再エネから生成するのでコスト高、ブルー水素はCCSの利活用が必要で、石炭の価格だけでなく、水素の生成やCCSのコストが上乗せされる。石炭の価格も高くなっていくと予想される。こうしたトレンドを見る限り、再エネはコストが下がっていくが、石炭が再エネよりコスト安になることはないと思われるが、再エネにコスト負けするまで石炭火力発電事業を続けていくのか?

(神鋼)再エネと石炭が対立しているように話されているが、再エネ、石炭の長短ベストミックスでやっていくのがよいと考えている。日本はすでに平地太陽光は世界トップで、これ以上広げる余裕がない。再エネを広げるとなると風力だが、送電コストが弱点。これを補うのに石炭に一定の役割があると考えている。

 

(当会の株主)公正な移行について。日本政府が取り組むとなったとき、神鋼は積極的に議論に参加する用意があるか?

(神鋼)公正な移行という考え方があるのは知っているが、政府による公正な移行の定義はまだない。参加するかどうかは政府次第のため、仮定の話なので回答できない。

 

(当会の株主)COP26においても、この10年(2020年からの)での取り組みとして、脱石炭に向けた動きが決定的に重要と言われている。2030年までに何に取り組むのか。石炭火力事業の見直しは?

(神鋼)日本政府は①混焼(アンモニア・水素等)により石炭比率を下げる、②非効率石炭をフェードアウトする2つで2050カーボンニュートラルを達成する予定。これには水素利用やCCS等が含まれる。5月のG7環境大臣会合ではアンモニア利用も脱炭素の取り組みとする合意がなされた。当社としては自社のロードマップに従って動く予定。1-2号機は高効率なので非効率石炭火力のフェードアウトの対象外。排熱利用、バイオマス、アンモニア実証などを行う予定としている。

 

株主総会を終えて

気候危機による影響を最小限に留めるため、国際社会においては気温上昇1.5℃未満を目指すことが重要であるとの科学的知見にもとづき、国際合意が形成されています。とりわけ、先進国においては「2030年までの脱石炭」の必要性が高まっています。しかしながら、日本政府の不十分な気候政策に従う神戸製鋼所は、2030年前半に自社の石炭火力発電所において、アンモニア混焼を目指すとしています。これでは、1.5℃に向けた排出削減策としては不十分です。また、G7合意においてアンモニア混焼が認められているとの見解を示していますが、日本政府の拡大解釈によるものです。アンモニア混焼による削減効果の定量的評価に対する懸念とリスクだけでなく、G7合意の拡大解釈による経営方針の選択は、政策変更リスクもあります。神戸製鋼所は、自社の高い技術力を活かして、再エネを中心とする脱炭素社会の構築に貢献する方向へ、方針転換する必要があります。

当会は、神戸製鋼所の経営陣に対して、石炭火力事業からの早期撤退、脱炭素社会への移行を求めて、株主として声をあげていきます。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。