【2026株主総会アクション報告】 神戸製鋼・アンモニア混焼計画と電力事業の課題

2026623日、神戸製鋼所の定時株主総会が開催されました。当会は会場前で、石炭火力事業が抱える経営リスクについて株主の皆様に情報提供を行うとともに、メンバーが株主として総会に出席し、経営陣に対して石炭火力事業からの撤退を求めました。

 

神戸製鋼所は鉄鋼メーカーのイメージが強い企業ですが、近年は電力事業が経常利益の約3割を占める重要な収益源となっています。そのため、石炭火力発電の将来性や脱炭素への対応は、環境問題だけでなく企業価値にも関わる重要な経営課題です。

 

今回は、神戸発電所(神戸市灘区)で計画されているアンモニア20%混焼計画と、足元の電力事業について質問を行いました。

アンモニア20%混焼では、燃料の約8割は依然として石炭であり、CO削減効果は限定的です。一方で、この計画は巨額の公的支援を前提としており、その費用は将来的に電気料金などを通じて市民・消費者の負担となる可能性があります。こうした点から、事業の実現可能性や情報開示のあり方が重要な論点となっています。

 

以下、当日の質疑応答と、そこから見えてきた課題を報告します。

当日の質疑応答

※質疑応答は、当日の内容を要約・編集して掲載しています。

発言の趣旨を損なわないよう努めていますが、逐語録ではありません。

【質問1】燃料調達ルートの停滞への影響

質問趣旨

2026613日付の日経GXは、神戸製鋼所の有力なアンモニア調達先と見られていた米国BluePointプロジェクト(丸紅・エクソンモービル)が、需要低迷を理由に一時停止したと報じました。5月の事業説明会では、勝川社長は2030年に必要な燃料は「目安として半分くらい」と説明しています。この調達ルートの停滞が計画に与える影響を質問しました。

 

回答(吉武邦彦 電力事業部門長)

2029年度のスタートに向けて準備を進めている。今後も全力で取り組みたい。」

 

コメント

BluePointプロジェクトの停滞という具体的な環境変化に対する説明はありませんでした。2030年までに必要とされる燃料をどのように確保するのか、代替調達も含めた計画は依然として不透明です。

 

【質問2】国の「値差支援制度」の採択状況

質問趣旨

高価なアンモニアと石炭の価格差を国が補填する「値差支援制度」について、JERAや北海道電力などはすでに採択されています。一方、神戸製鋼所は採択状況を公表していません。公的支援獲得の見通しを質問しました。

 

回答

「現在、国による審査中である。全力で支援獲得に取り組みたい。」

 

コメント

採択時期や見通しについて具体的な説明はありませんでした。この制度は事業採算性だけでなく、公的支援を前提とした事業モデルそのものが成立するかを左右する重要な要素です。

 

【質問3】オークション契約の変更と売電先との交渉

質問趣旨

神戸製鋼所は、1号機について長期脱炭素電源オークションの契約を一度辞退し、第3回オークションで再度落札しています。なぜ1号機だけ契約を変更したのか。また、高コストとなるアンモニア燃料について、売電先との協議状況を質問しました。

 

回答

「制度上認められたため、一度退出し、その後再度応札・落札した。」

 

コメント

アンモニア混焼案件で、一度落札した契約を辞退し、再入札したのは神戸製鋼のみです。この経営判断は事業性を評価する上で重要な情報ですが、1号機のみ契約を変更した理由や、その判断に至った経緯について具体的な説明はありませんでした。また、売電先との協議状況も非開示とされました。

 

【質問4-13号機の定期点検延長について

質問趣旨

株主総会の資料には「神戸発電所3号機の定期点検の延長などにより前期を下回った」と記載されています。点検が長期化した理由を質問しました。

 

回答

20261月に終了予定だった定期点検は5月末まで延長されました。機器と配管の分離作業で想定外の事象が発生し、対応に時間を要したとの説明でした。

 

コメント

運転中の事故ではないとの説明でしたが、現在も原因究明が続いています。今後の再発防止策について継続的な説明が求められます。

 

【質問4-2】アンモニア混焼実証とデータ開示

質問趣旨

実証実験の開始時期と、CO削減量や発電コストなどのデータ公開について質問しました。

 

回答

2029年度になにがしかの形で試運転または実証を進めたい。CO削減量は神戸市を通じて公表する予定である。発電コストは営業上の機密のため公表を差し控える。」

 

コメント

CO削減量は公表される見込みですが、事業性を判断する上で重要な発電コストは開示されないとの回答でした。公的支援を前提とする事業である以上、経済合理性についてどの程度説明責任を果たすのかが問われます。

事業リスクレポート2026

最後に

今回の質疑を通じて、アンモニア混焼計画の根幹となる①燃料調達、②公的支援、③売電契約、④経済性について、具体的な見通しは示されませんでした。計画の実現性を判断する上で重要な情報の多くが依然として不透明であり、株主が事業リスクを適切に評価するための十分な説明があったとは言えませんでした。

神戸製鋼所では、電力事業が経常利益の約3割を占める重要な収益源となっています。だからこそ、アンモニア混焼計画の実現性や経済性は、環境問題にとどまらず、企業価値や株主利益に直結する経営課題です。燃料調達、公的支援、売電契約、経済性といった重要な論点について、より透明性の高い情報開示が求められます。

石炭火力へのアンモニア混焼は、燃料調達、公的支援、経済性のいずれをとっても多くの課題を抱えています。こうした状況の中で、再生可能エネルギーや省エネルギーへの投資拡大など、より実現可能で持続可能な脱炭素戦略への転換が求められています。

私たちは今後も、神戸製鋼所に対し透明性の高い情報開示を求めるとともに、アンモニア混焼計画や石炭火力事業の動向を継続して注視し、発信を続けていきます。