2018年、全国各地で観測記録を超える高温が観測され、集中豪雨や洪水など深刻な異常気象にみまわれています。これらの異常気象は気候変動との関連が指摘されており、気候変動がさらに進めば、私たちの暮らしは今以上に大きな自然災害のリスクに脅かされます。
気候変動の最大の原因の一つが石炭火力発電所からのCO2排出ですが、日本では、むしろこれから多数の石炭火力発電所が建設されようとしています。
なかでも、人口密集地である神戸市南部には、規模が大きい神戸製鋼石炭火力発電所の計画があります。
この計画は、現在ある2基の大きな石炭火力発電所と同じ場所にさらに2基増設する計画です。建設されれば、大量の大気汚染物質の排出による地域住民への健康被害が懸念され、気候変動対策に全く逆行して非常に多くのCO2が排出されてしまいます。
日本には、石炭火力発電所の計画を止めるための規制がありません。住民は、環境保全の観点からこの計画に当初から反対してきましたが、2018年の夏には、工事計画が提出されてしまいました。
そこで2018年9月14日、神戸市在住の住民が中心となり、神戸製鋼や関西電力などに対して、発電所の建設と稼働の差し止めを求め、神戸地方裁判所に出訴しました。
今回の訴えは、神戸だけの問題ではありません。企業利益ばかりを追求した石炭火力発電所が許されないのは、どの地域においても同じです。子どもたち、孫たちの健康や暮らしや住みよい環境を守るため、全国の皆さんとともにこの裁判をたたかっていきたいと思います。現在、サポーターを募っております。ご支援をよろしくお願いします。
訴状について
Q. 石炭火力発電所は何が問題なのですか?
A.①大気汚染による地域住民の健康被害
石炭火力発電所は、硫黄酸化物や窒素酸化物、ばいじんといった大気汚染物質を大量に排出します。
これらは広範囲に拡散し、住民の健康を脅かします。
②地球温暖化の加速/気候変動
年間692万トンものCO2を排出します。
この量は日本の温室効果ガス排出量の0.6%程度に相当する量で、150万世帯のCO2排出量と同じです。
(参考:神戸市 世帯数70万世帯)
Q.誰が原告になったのですか?
A. 神戸市など発電所周辺地域に住む市民です。原告には、子どもたち・孫たちに住みよい環境を引き継ぎたいと願うおばあちゃん・おじいちゃん世代、お母さん・お父さん世代、そして、住みよい環境を引き継ぐ権利がある子どもたちが含まれています。この裁判は、汚染も気候変動による被害もない地球を次の世代に引き継ぐための「次世代訴訟」なのです。
①本件石炭火力発電所の建設・稼働は、原告らの人格権を違法に侵害する
・清浄な空気のもとで持続的に健康で平穏に生活する権利(健康平穏生活権)の侵害
新設発電所は、NOx、PM2.5など大気汚染物質を長期継続的に排出し、原告らの生命・健康への危険を増大させる。
・安定した気候を享受する権利(安定気候享受権)の侵害
新設発電所は、大量のCO2を30年以上にわたり排出する。
そのことにより、確実に気候変動に寄与し、結果として原告らの生命・健康・生活基盤への危険を増大させる。
・加害行為は長期にわたって継続し、被害を被る者の範囲は極めて広い。
②2030年および2050年の日本の温暖化対策目標とも整合しない
③住宅地の資金、大気汚染物質規制地域・基準未達成地域にあえて大量排出源を作る計画である。
④電力需給の面からみて、本件発電所の建設・稼働の必要性(公益性)がない
⑤環境負荷の小さい他の代替案(たとえば天然ガス火力)について検討もせず、CCS(炭素回収・貯留)も備えていない
現在稼働中の発電所、新設発電所の予定地