Q.神戸の石炭火力問題とは何ですか?
A.神戸製鋼所が、神戸市灘区に大規模石炭火力発電所の建設中です。石炭火力発電所は、さまざまな課題があります。
神戸には現在、既存の神戸発電所(石炭、70万kW×2基計140万kW)が稼動していますが、これに加え、神戸製鉄所高炉休止跡地に(65万kW×2基)130万kWの新たな石炭火力発電所の建設計画が進められています。発電所からの電力は、全量、関西電力に買い取られます(建設計画の概要は右表参照)。
この建設計画には、主に以下の問題点があります。
神戸製鉄所火力発電所(仮称) 建設計画概要 | |
事業者 | 神戸製鋼所→コベルコパワー神戸第二 |
所在地 | 神戸市灘区灘浜東町2 |
設備容量 | 65万kW×2基(計130万kW) |
運転開始予定 | 1号機:2021年 2号機:2022年 |
発電技術 | 超々臨界圧(USC) |
計画発電効率 | 43% |
年間CO2排出量 | 約690万トン-CO2 |
SOx排出濃度 | 13ppm |
NOx排出濃度 | 20ppm |
Q.火力発電所が住宅地に近いとどんな問題がありますか?
A.石炭火力発電所は、他の火力発電所よりも大量の大気汚染物質を排出し、これを起因として、より多くの人が健康被害にあう懸念があります。また事故発生時の影響も心配です。
この発電所は、2012年以降に発表された全国約50基ある建設計画の中で、人口密集地域に計画している大型石炭火力発電所の一つです。
神戸製鋼所では既存の神戸発電所を地域と共生する「都市型発電所」と表現していますが、周辺環境への影響が大きい石炭火力発電所を建設することに大きな問題があります。既に稼働している2基と合わせて、合計4基270万kWの石炭火力発電所が誕生すれば、原発3基分にも相当する大規模なものです。その影響は、神戸市だけに留まりません。
※私たちは、神戸以外の郊外に建設される場合であっても、石炭火力発電所は環境への影響が大きく、新たに建設することはやめるべきだと考えています。
Q.大気汚染物質は本当に増加するのでしょうか?
A.石炭火力発電所は、汚染防止装置を設置しても、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)などの大気汚染物質を排出します。これらは、PM2.5などの生成にも関連しており、周辺の大気環境へ大きなマイナス影響が発生します。
神戸製鋼所が作成した環境影響評価準備書には、廃止する高炉が100%稼動している場合と比較して、将来的には大気汚染物質の排出が軽減するような説明していますが、実際の高炉稼働率はそんなに高くはありません。環境省公表資料を基にした私たちの分析では、新発電所が稼動すれば、NOxについては年間約500トン増と予測されます。これはこれまでの5割増しです。
しかも建設予定地は、かつて深刻な大気汚染があった地域で、今でも一部環境基準を超過している地域※があり、現状以上に汚染物質が排出されることは望ましくありません。
※例えば、PM2.5は32ヵ所で測定されていますが、20ヵ所において、環境基準を未達成の状況です。
Q.最新の汚染防止技術を未導入というのは本当ですか?
A.導入設備の詳細は明らかになっていませんが、約10年前に設置された神奈川県磯子区の磯子火力発電所(石炭、60万kW)と比較して、事業者が公表した準備書におけるNOx、SOxの排出濃度は高くなっています。
発電所名 | 事業者名 | 設備容量 | 発電技術 | 稼動年 | NOx | SOX |
磯子火力発電所 新2号機 | 電源開発 | 60万kW | 超々臨界圧(USC) | 2009年 | 13ppm | 10ppm |
神戸製鉄所火力発電所(仮称) | 神戸製鋼所 | 65万kW | 超々臨界圧(USC) | 2021年(予定) | 20ppm | 13ppm |
神戸発電所 2号機 | 神戸製鋼所 | 70万kW | 超臨界圧(SC) | 2004年 | 24ppm | 24ppm |
電源開発、神戸製鋼所作成資料より作成
Q.地球温暖化を促進するのは何故ですか?
A.たとえ最新鋭の石炭火力発電所であっても、そのCO2排出量は他のどの火力発電よりも多いからです。
石炭火力発電所は、大気汚染物質だけでなく、大量の温室効果ガスを排出します。2021年から約40年稼働するならば、将来世代が負担する温暖化対策コストを押し上げてしまいます。パリ協定が採択・発効し、世界が温暖化対策へ大きく舵を切る中、日本は、神戸は、大量の温室効果ガスを排出する石炭火力発電所を建設するのでしょうか?世界に逆行しています。
Q.神戸に本当に火力発電所が必要なの?
A.神戸製鋼所は、大都市におけるライフラインの自立の必要性等を謳っていますが、既存の神戸発電所でピーク需要の約7割を賄う能力を有しています。これ以上、神戸に発電所を設ける必要はありません。
関西では、夏のピーク需要は、東日本大震災前と比べて15%程度減少しました。市民や事業者において節電や省エネが定着したことが大きな要因です。今後も電力消費は減っていくと考えられます。兵庫県内では赤穂発電所の石炭火力への改造計画は中止、電源開発の高砂火力発電所の建て替え計画も中止になりました。いずれの計画も、「電力需要の低下」があげられています。
環境負荷が大きな石炭火力発電所の必要性や事業性は低下しています。省エネを進め、再生可能エネルギーの普及を進め、比較的クリーンな天然ガスを組み合わせることで環境負荷の低減につながります。これ以上の石炭火力所は、不要です。