【大会宣言】第35回日本環境会議40周年神戸大会宣言文(2019/3/03)

2019年3月2日~3日、当会も共催しました日本環境会議40周年記念大会が神戸で開催されました。

2日目は、「神戸における石炭火力発電所増設問題」、「福島原発事故からの再稼働を問う」2つの分科会が開催され、活発な議論が行われました。神戸における2日間の議論を経て、以下の大会宣言が採択されました。

石炭火力発電と原子力発電のない維持可能な社会を目指す

神戸からの宣言

─ 第35回日本環境会議40周年神戸大会宣言 ─

 

エネルギー利用をめぐる環境問題は、いまや危機的状況にある。2018年の猛暑や豪雨、台風などを想起すれば、気候変動は潜在的なリスクから現実の危機へと変わったといってよいであろう。一方、原子力発電によってシビア・アクシデントが現実に起き、もはや事故が起こらないという人はいなくなった。石炭火力と原子力のいずれもが、現存世代だけでなく将来世代の人権を著しく侵害することは明らかである。私たちはこの問題を一刻も早く解決しなければならない。

2019年3月2日、3日の2日間にわたって、私たちは神戸に集い、全体テーマ「エネルギー政策の転換をもとめて」のもとにエネルギー利用をめぐる環境問題の現状と課題について議論を行った。その成果を踏まえ、私たちは以下に宣言する。

 

1.国内外において石炭火力発電所の新増設をやめ、再生可能エネルギーへと転換すること

日本は、2050年までに温室効果ガスを8割削減することを目標としている。また、極めて不十分な目標ではあるが2030年までに温室効果ガスを2013年比で26%削減することを目標としている。しかし、既存の、及び、建設計画中の石炭火力発電所の設備容量は、これらの目標に対して過大である。

2050年目標を前提とすると天然ガスによる火力発電も漸次縮小してゆかなければならないが、天然ガス火力と比較して2倍以上のCO2を排出する石炭火力発電所を、この期に及んで新増設することは絶対に許されない。それに加えて、石炭火力発電は、天然ガス火力発電と比べて、SOx、NOx、ばいじん、SPM、PM2.5、水銀などといった大気汚染物質を多く排出するものであり、地域の大気環境の保全という観点からも、最悪の燃料である。

世界的に見ても、特に石炭火力発電からの脱却、石炭火力関連の事業からの投資の引き上げ(ダイベストメント)の動きが加速している。また、世界各地で、気候変動対策を求める訴訟、石炭火力発電所の操業の差止を求める訴訟が提起されている。しかしながら、日本においては、現在もなお、ここ神戸の計画を含め、30数基の石炭火力発電所の建設計画がある。政府及び電力会社は、温暖化対策、地域環境の保全、水銀排出の削減をすすめるため、石炭火力発電からのすみやかな脱却をすすめるべきである。神戸製鋼の石炭火力発電所の新増設計画を含め、石炭火力発電所の新増設を中止させ、再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムをできるかぎり早く構築しなければならない。

 

2.福島原発事故を引き起こした法的責任を踏まえ、被害者救済と復興に尽力すること

東日本大震災と福島原発事故の発生から8年が経つ。原発事故の深刻な被害が収束したわけではなく、事故処理にも非常に長い時間を要するのは明らかである。

しかし、原発事故の賠償は不十分なまま次々に打ち切られ、ADRの和解案も東京電力が次々に拒絶している。東京電力は、深刻な原発事故を引き起こし甚大な被害をもたらした加害責任を法廷で認め、また、ADR和解案を拒否することなく、賠償と復興に真摯に向き合うべきである。政府も、原発被災が人びとになお苛酷な困難をもたらしていることを明確に認め、「一人ひとりの復興」が可能になるよう、きめ細かな支援策を継続すべきである。また、福島原発事故を引き起こし、被害をもたらした加害責任があることを認め、事故対応を抜本的に改めなければならない。

 

3.原子力発電への依存をやめること

私たちは、東京電力福島第一原発事故により、原発は甚大な被害をもたらしうるものであることを知ることとなった。絶対に安全な原発は存在せず、原発がある限り事故のリスクが少なからず存在する。原発の利用には、必然的に放射性廃棄物の発生も伴う。そのため、市民の多数は、原発の再稼働に反対しており、全国各地で稼働差止訴訟が提起されている。

福島原発事故後、安全対策のための費用が増大し、世界的にみて原発の建設計画は大きく後退している。にもかかわらず、「エネルギー基本計画」(2018年)では、2030年に発電量に占める原発の比率を20~22%にするという目標が示されている。これは実現不可能な数字であるばかりでなく、このような実現不可能な目標を設定することによって、本格的な温暖化対策を遅らせている。

政府及び電力会社は、原発への依存をやめ、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー供給体制をできるかぎり早く構築しなければならない。

 

4.私たちの決意

再生可能エネルギーを中心に、市民や自治体が、自らの手でエネルギーの利用のあり方を革新する動きが拡がってきた。私たちは、将来世代や国際社会に対して責任を果たそうとする人々とともに、石炭火力発電や原子力発電からの脱却を実現するため、次のことを実行する。

 

・石炭火力発電所の新増設・稼働の差止訴訟など、脱石炭火力のための運動を展開し、あるいは、それらを支援する。

 

・福島原発事故を起こした東電・政府の責任を問い、賠償と被害者の権利回復を問う訴訟、原発の安全性を問う訴訟、稼働の中止を求める訴訟など、福島原発事故被害者の権利回復を求める運動、脱原発のための運動を展開し、あるいは、それらを支援する。

 

・私たちは、エネルギーの消費者として、石炭などの化石燃料や原子力の依存度が高い電力会社ではなく、再生可能エネルギーの割合の高い電力会社を選択する。

 

・政府や電力会社などに対して働きかけるだけでなく、自らが再生可能エネルギー事業を行ったり、省エネルギーに取り組んだりする等、自らの手で、維持可能なエネルギーシステムを実現する努力を続ける。

 

2019年3月3日(日)

第35回日本環境会議40周年記念神戸大会参加者一同


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